モカエキスプレス

ビアレッティと聞いて一番に連想するコーヒーマシン『モカエキスプレス』。このマシンは1933年に販売され、80年以上、今日までほとんど変らないデザインのまま世界中で愛用されており、ニューヨークの近代美術館の永久展示品にも選ばれています。

その誕生のヒントとなったのは、なんと『洗濯機』。当時イタリアの洗濯機は大きな容器にパイプが差しこまれた『 liscivuese 』という道具でした。

使い方は下に水を入れ、その上の穴が開いているカバーに洗濯物と洗剤をのせ容器ごと火にかけて温めます。沸騰寸前のお湯が中央のパイプからあがり、洗濯物にふりかかり洗剤が汚れを落として下に流れる という仕組みになっています。この頃のイタリアではエスプレッソを楽しむためにはコーヒーショップ、つまりバールに行かなければなりませんでしたが、ビアレッティはこの仕組みを使えば、 自宅でもエスプレッソを抽出できるのではと考えたことが始まりです。

こうして誕生した『モカエキスプレス』は イタリアに一つのブームを巻き起こしました。

モカエキスプレスが誕生した19世紀前半のイタリアはそれまで家庭にこもっていた女性たちが少しずつ外の世界へ歩みだした時期です。当時、エスプレッソは男性の飲み物とされ専門のコーヒーショップ『 バール 』で楽しまれていました。必然的にエスプレッソの味を知る女性は少なかったのです。

こうした中、人々の間に広がっていったモカエキスプレスはエスプレッソを『 誰でも家庭で楽しめる飲み物 』に変え、人々の生活文化を変える一つのきっかけとなったのです。エスプレッソの美味しさを知った女性たちはバールを利用するようになりました。そしてモカエキスプレスを知った男性たちは、それまで立ったことのないキッチンに立ち家族のためにエスプレッソを淹れるようになり、それがブームになったのです。こうしてモカエキスプレスはイタリアの家庭でなくてはならないアイテムとして広まっていきました。